賃貸の物件探しで必ず耳にする「仲介手数料」とは、貸主と借主との仲介をサポートしてくれた対価として、不動産会社に支払われるものです。
仲介手数料は初期費用に関わってくるため、できることなら抑えたい費用の一つです。
また、中には法律で定められている仲介手数料の上限金額以上の請求をする不動産会社もあり、様々なトラブルが報告されています。
そこで今回は、賃貸の仲介手数料について詳しく解説していきます。
値引きの交渉や無料になるケースと合わせて、初期費用を抑える方法も解説するので、ぜひ参考にしてください。
賃貸の仲介手数料とは?
賃貸の仲介手数料とは、賃貸物件の貸主と借主が賃貸借契約を仲介する不動産会社へ支払う手数料です。
賃貸物件を借りるときは、物件探しだけではなく、さまざまな手続きが必要です。
このような手続きを全面的にサポートしてくれる不動産会社に支払う報酬が仲介手数料です。
具体的なサポートは以下の通りです。
- 物件探し
- 内見の手配
- 契約条件の交渉
- 重要事項説明
- 契約締結の準備と実施
このように、契約締結に至るまで、借主と貸主の間を仲介して行うさまざまなサポートへの報酬として支払うものが仲介手数料ということになります。
ただし、賃貸の仲介手数料は、契約が成立したタイミングで発生するものなので、契約が成立しなかった場合、手数料が請求されることはありません。
では、賃貸物件における仲介手数料の一般的な相場はどのくらいになるのでしょうか。詳しく解説していきます。
賃貸の仲介手数料の上限金額
賃貸の仲介手数料は「宅地建物取引業法」によって、契約する物件の「家賃1ヶ月分+消費税」以内が上限と定められています。
また、不動産会社が借主から得られる仲介手数料は、家賃1ヶ月分の50%と宅地建物取引業法で定められており、もう半分は貸主から受け取ります。
つまり、借主が支払う仲介手数料は、本来は家賃0.5ヶ月分となります。
ですが、仲介手数料は「依頼者の承認がある場合は、借主と貸主、どちらか一方から賃料の1ヶ月分を受け取ることができる」ため、このことを説明せずに、家賃1ヶ月分で契約させられていることがあります。
上記のケースはよくあることなので注意してください。対処方法は後ほどご紹介します。
また、2019年10月から10%に引き上げられた消費税率ですが、仲介手数料の消費税に関しては、8%に据え置く軽減税率には該当しません。
そのため、仲介手数料の消費税は10%での計算になることを理解しておきましょう。
賃貸の仲介手数料は交渉できる
賃貸の仲介手数料に下限はなく、交渉して安くすることができます。
全国の賃貸物件の約92%は、どの不動産会社でも扱うことができるため、仲介会社はどこを選んでも物件は変わりません。
そのため、先述した仲介手数料を多く取る不動産会社は避けるようにしましょう。
また、複数の業者で相見積もりを取って比較することで、仲介手数料を安くすることができるので、不動産会社は複数社を訪ねるようにしましょう。
ですが、値引き交渉をしている間に、他の希望者に契約されてしまうというリスクも発生します。
そのため、仲介手数料の値引き交渉をしたい方は、以下の3つを心がけてください。
- すぐに空き部屋が埋まらない人気のない物件を選ぶ
- 閑散期(4~8月)に引っ越しする
- 丁寧な姿勢で交渉する
多少利益が減ったとしても早く借り手が決まって欲しいと思うようなタイミング・姿勢で交渉すると、応じてくれる可能性は高まります。
また、「賃貸の仲介手数料の交渉はあまりしたくない!でも初期費用は抑えたい!」という方は、最初から仲介手数料が無料の物件を探すと良いでしょう。
賃貸の仲介手数料が無料の2つの理由
仲介手数料が無料を謳っている不動産会社や、仲介手数料が無料になる物件があります。
そうすると、内見や手続きなど、仲介サポートを行った不動産会社が無料で働くことになると心配に思う方もいると思います。
そこで次は、仲介手数料を無料にできる仕組みをご紹介します。
賃貸で仲介手数料が無料の物件には理由があります。
- 大家さんが全額負担している
- 不動産会社が所有している自社物件
- 大家さんから広告料を受け取っている
順番に解説していきます。
1. 大家さんが全額負担している
賃貸の仲介手数料の上限は、家賃の1ヶ月分と紹介しましたが、本来は貸主と借主で折半になります。
なので、大家さん(貸主)が仲介手数料を全額負担している場合は、借主は仲介手数料が無料になります。
空室が続くような状況では、貸主である大家さん自らが仲介手数料を負担し、少しでも早く借り手が見つかるように入居条件を整えるケースがあります。
仲介手数料無料の物件は、大家さんにとっても空室のままではなく早く入居してもらうことで、毎月の収入を得られるというメリットがあります。
2. 不動産会社が所有している自社物件
不動産会社が所有している自社物件の場合、賃貸の仲介手数料が無料になるケースがあります。
賃貸物件の多くは、貸主が個人の大家さんとなるため、仲介会社はサポートとして携わり、その対価として仲介手数料が発生します。
ですが、不動産会社が所有している自社物件の場合、仲介業務が不要なため対価は発生しません。
また、不動産会社が大家さんの立場になるので、先述した大家さん側のケースと同じで、空室のまま放置しておくよりも、毎月の収入として家賃が発生したほうがメリットがあります。
3. 大家さんから広告料を受け取っている
大家さん(貸主)は、仲介会社に特別な広告を行ってもらい賃貸借契約が締結した場合、仲介手数料とは別で広告料を仲介会社に支払います。
なので、仲介会社は仲介手数料以外にも報酬を受け取ることで、仲介手数料を無料にすることができます。
広告料の相場は家賃1ヶ月分と言われていますが、上限がないため「賃料1.5ヶ月~3ヶ月分」というケースもあります。
仲介手数料が無料になるデメリット
ここまで、仲介手数料の上限金額や値下げ交渉、無料になる理由を説明しました。
仲介手数料が無料になるのであれば、交渉した方が良いと思いますが、一方でデメリットも存在します。
次は、賃貸の仲介手数料が無料になる場合のデメリットについて解説します。
賃貸の仲介手数料が無料になる場合のデメリットは、主に以下の2つです。
- 家賃や共益費が高く設定されている可能性がある
- 不動産会社のサービスが手薄になる可能性がある
順番に解説していきます。
1. 家賃や共益費が高く設定されている可能性がある
仲介手数料が無料の場合、家賃や共益費が相場よりも高く設定されているケースがあります。
賃貸の仲介手数料を無料に設定している背景の1つとして、入居者が集まらないということが考えられますが、その原因が「家賃が相場よりも高い」「敷金礼金が相場よりも高い」ということがあります。
上記の場合、たとえ初期費用が抑えられたとしても、同じ部屋に住めば住むほど支払う金額が増えてしまいます。
このような事態に陥らないためにも、必ずその地域の相場を事前に確認しておきましょう。
2. 不動産会社のサービスが手薄になる可能性がある
仲介手数料を無料にしたばかりに、不動産会社のサービスが手薄になる場合もあります。
仲介手数料とは、サポート業務に対して発生する対価です。仲介手数料が無料ということは、その分、不動産会社の売上が少なくなります。
つまり、仲介手数料を支払う契約の方が、より手厚いサービスを提供してくれる可能性が高くなります。
また、仲介手数料が無料でも、書類作成費などのように、別名目で費用を請求されるケースもあるので注意しましょう。
仲介手数料ではなく家賃を値引きするのは可能か
賃貸の仲介手数料が無料になる仕組みを理解できたと思います。
では、仲介手数料ではなく、家賃そのものを値引きしてもらうことはできないか気になる方も多いと思います。
結論から言うと、賃貸の家賃を値下げしてもらうことは難しいでしょう。
仲介手数料は、不動産会社(仲介会社)が受け取る金額なので交渉しやすいですが、家賃は大家さんが受け取る金額なので、交渉が難しくなります。
また、アパートやマンションのような集合住宅では、同じ間取りの物件はいくつもあり、借主によって家賃が違うということはトラブルの原因になります。
確かに、賃貸の仲介手数料が無料になるより、毎月支払う家賃が安いほうが、初期費用も安く抑えられる上に、長い目で見たら合計の費用は大幅に削減できます。
ですが、貸主としても大幅に収入が少なくなり、賃貸物件自体の資産価値も下がってしまいます。
そのため、仲介手数料を支払う代わりに、家賃を下げるという交渉は難しいと理解しておきましょう。
仲介手数料を支払うタイミング
仲介手数料を支払う物件を選んだ場合、仲介手数料はいつ支払うのでしょうか。
賃貸の仲介手数料を支払うタイミングは、賃貸借契約の成立時が一般的です。厳密にいえば、契約締結前に前払い家賃などと一緒に支払うことになります。
仲介手数料とは物件紹介料ではなく、貸主と借主の取引のサポートに対する報酬です。
そのため、基本的には納品基準で発生する報酬のため、納品が済んだと認められる時期が支払う時期ということになります。
つまり、早くて「重要事項説明書の読み合わせ終了後」、遅ければ「引っ越し(入居開始)の前日」になり、その期間内で支払います。
仲介手数料は、基本的に賃貸契約時の初期費用として敷金や礼金とともに請求されるため、仲介手数料のみを単体で支払うことはありません。
仲介手数料以外に初期費用を抑える方法
初期費用を抑えるために、仲介手数料を抑えるのは一つの手段ですが、他にも初期費用を抑える方法はあります。
賃貸物件を借りる際には、様々な初期費用が発生します。
コストを抑えるためには、仲介手数料だけではなく以下の費用にも目を向けてみましょう。
- 敷金礼金なしの物件
- フリーレントの物件
順番に解説していきます。
敷金礼金なしの物件
多くの賃貸物件の初期費用には、敷金礼金が含まれていますが、中には敷金礼金がない物件もあります。
敷金礼金の相場は家賃の1〜2ヶ月分のため、家賃が高ければ高いほど敷金礼金も高くなってしまいます。
仲介手数料の上限が家賃の1ヶ月分なので、初期費用で多くの割合を占める敷金礼金が発生しない物件は、大きなコスト削減に繋がります。
ただし、敷金は退去時のハウスクリーニング代などに必要な費用なので、退去時に原状回復費用として支払う場合があるので注意しましょう。
敷金礼金ゼロの物件について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせて参考にしてください。
敷金礼金なしの賃貸物件とは?注意点と後悔しない物件の選び方を解説
フリーレント物件
フリーレント物件を探すことも、初期費用を抑えるための選択肢の一つです。
フリーレント物件とは、入居後一定期間家賃が無料になる物件のことです。
一般的には、最初の1ヶ月が無料になるケースが多く、長いものだと3ヶ月〜半年間無料になる物件もあります。
そのため、通常発生する敷金や礼金がなく、初期費用を大幅に抑えることが可能です。
ですが、フリーレントには理由があるので、契約前に以下の項目を不動産会社に確認するようにしてください。
- 短期で契約解除ができない
- 家賃が高く設定されている
- 長い間入居者がいない
- 築年数が古い
また、敷金礼金ゼロ物件やフリーレント物件以外にも、初期費用を抑える方法はたくさんあります。
以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
これだけで安くなる!一人暮らしの引っ越し費用の相場と安く抑えるコツ
【最後に】賃貸の契約は必ず相見積もりを取ろう
今回は、賃貸物件における仲介手数料について解説しました。
仲介手数料の上限は、家賃0.5月分+消費税と法律で定められています。
また、最近では仲介手数料は交渉が可能で、最初から無料の仲介会社も増えています。
仲介会社は、どこもほとんど同じ物件を取り扱っているので、賃貸物件の内見をした後でも複数の会社で相見積もりを取るようにしましょう。
ですが、仲介手数料が安いのが必ずお得とは限らず、人気の物件であればすぐに埋まってしまうこともあるので注意してください。