引っ越す先の物件が決まると不動産会社で物件の契約をします。
その際には、必ず契約内容を書面で残します。
この時に締結する契約書を賃貸借契約書と言い、物件を借りる期間や家賃、お部屋の決まり事などが記載されています。
さらに、賃貸借契約書は物件でトラブルがあった際に自分を守る役割があり、賃貸借契約書がないと無断で不利な契約内容に変更される可能性もあります。
そこで、この記事では不動産賃貸の賃貸借契約書について、あなたが不利にならない契約書の正しい読み方や注意点をわかりやすく解説します。
賃貸借契約書に関するよくある質問もご紹介するので、最後までご覧ください。
賃貸借契約書とは
賃貸借契約書(ちんたいしゃくけいやくしょ)とは、土地や建物などを借りる際に借主と貸主が交わす契約書です。
記載されている内容は、借りる対象物に対して、期間や毎月支払う賃料、使用のルール、対象物が損害を受けた場合の負担区分などが書かれています。
一人暮らしの部屋を借りる際には、お部屋の設備や備品の取り扱いに関するルールや、家賃の支払い方法、退去時に関する原状回復についても記載されています。
賃貸借契約書の重要性
賃貸借契約書は、貸主と決まりを交わす証拠書類になるので、あなたをトラブルから守る役割を果たします。
特に、書面で重要とされている箇所は、家賃の支払日や物件に損害を与えた場合の責任の所在と退去(解約)に関する申し出、退去後の原状回復などです。
これらの箇所を重点的に確認しないと、トラブルに遭った際に損害賠償責任を負うことになります。
さらに、賃貸借契約書があることによって、責任は誰にあるのか判別できるので、理不尽な責任を課せられても無効になる可能性もあります。
賃貸借契約書の書面は入居中はなくさないで、自分で取り出せる場所に必ず保管しておきましょう。
重要事項説明書との違い
賃貸借契約書とは別で、賃貸物件の契約時には重要説明事項説明書というものも受け取ります。
賃貸借契約書は、対象物(お部屋など)の決まり事についてお互いに認識したことを交わす書類ですが、重要事項説明書は貸主向けの借用物の説明書になります。
つまり、重要事項説明書と賃貸借契約書はそれぞれ書類の役割が異なります。
特に重要事項説明書は、お部屋や土地などの不動産を借りる際には、不動産会社の宅地建物取引士から説明を行わないと契約ができません。
賃貸物件の大切な説明内容を把握してから、借主と貸主の間で賃貸借契約書で契約を結ぶことになります。
賃貸借契約書の正しい読み方
賃貸借契約書は、基本的に不動産業者が作成した書面に署名と捺印をします。
不動産賃貸に特化した賃貸借契約書のフォーマットには、賃貸借の目的物(物件の内容)や契約期間、賃料などが記載されています。
参考資料:賃貸住宅標準契約書
まずは、賃貸借契約書の記載事項のチェック項目を把握するため、以下の早見表をご覧ください。
賃貸借契約書の記載項目 | |
---|---|
賃貸借の目的物 | 建物の名称・所有地、住戸部分、付属施設について |
契約期間 | 居室の契約期間 |
賃料等 | 毎月の賃料と共益費、振り込み日と振込先情報 |
貸主及び管理業者 | 大家さんと管理会社の連絡先情報 |
借主及び同居人 | 借主の氏名と連絡先 |
家賃債務保証業者または連帯保証人 | 連帯保証人と保証会社の名称 |
条文 | 火災に関する責任や解約予告の期限など |
その他特約事項 | 短期解約による違約金やハウスクリーニング費用など |
では、上記の表の各記載項目について、それぞれ詳しく解説します。
賃貸借の目的物
賃貸借契約書の最初の項目には、物件の詳細について記載されていて、主に下記の内容について書かれています。
- 建物の名称・所有地
- 住戸部分
- 付属施設
建物の名称と所在地は、マンションの名称と住所、建て方、構造、戸数、工事完了について記載されています。
特に、建て方と構造について、アパートとマンションは共同建であることが多く、戸建ての場合は一戸建に丸印で囲っています。
構造には、木造もしくは非木造が記載されていますが、非木造は鉄筋コンクリート造(RC造)か鉄骨造(S造)などの構造種類が記載されます。
住戸部分は、居住する号室番号と間取り、居室の面積が記載され、設備の部分の有無やガスの種類、上下水道、電気の契約アンペアが書かれています。
付属施設には、駐車場や駐輪場の有無、収容台数、物置などの設置の有無が記載されています。
契約期間
居室の契約期間は、始期と終期までの期間が記載されていて、いつからいつまで入居できるのかが書かれています。
賃貸借契約には、普通借家契約と定期借家契約があり、定期借家契約の場合は定期的に契約を更新する必要があるので、その時期を確かめるための項目になります。
賃料等
第3項目の賃料等の部分には、毎月の家賃の他に共益費や一時金の有無が記載されています。
さらに、賃料の振込先、金融機関、毎月の支払日も記載されています。
敷金も同じく、賃料の何ヶ月分を預けていますと言う文面もあるので、契約期間、賃料と同様に確認します。
貸主及び管理業者
賃料の下段には、貸主(大家さん)もしくは管理会社の連絡先が記載していて、居室で何かあった際の緊急連絡先になります。
そして、管理会社が連絡先となっている場合には、物件の所有者の氏名と所在地が記載されています。
管理会社の連絡先が記載されている場合は、一般的に管理会社でお部屋の管理を行うので、何かあった際には管理会社が窓口になります。
借主及び同居人
第5項目には、借主と同居人の氏名が記載されますが、主に借主の連絡先が記載されています。
貸主が連絡しやすいように、携帯電話番号が記載されることが多いですが、何かの事情で電話番号が変わった際には必ず、貸主に新しい電話番号を連絡します。
そして、同居人がいる場合は、同居人の名前も記載する必要があり、借主以外の方が居住していることが発覚すると契約違反になります。
貸主が本当に借主本人と同居人が居住していることを確かめるためにも、借主と同居人の記載があることを覚えておきましょう。
家賃債務保証業者または連帯保証人
第6項目には、連帯保証人と使用する保証会社の名称が記載されていて、書式によっては連帯保証人用の書式と保証会社用の書式とわかれています。
連帯保証人の場合は、親族か借主に近い方の名前が記載され、保証会社を使う場合は、保証会社の会社名と連絡先が記載されます。
万が一、借主が家賃を滞納した場合や、物件に損害を与えて賠償責任を負わない場合に連帯保証人や保証会社に賠償責任が来ます。
条文
条文は、家賃の未払いに関する内容やお部屋の備品、火災についての責任の所在など重要な内容が書かれています。
特に解約予告の期限や更新時期について、この条文に記載があります。
甲乙など、法律用語がでてわからない言葉も出てきますが、わからない箇所があれば、必ず不動産会社の担当者に聞くようにしましょう。
その他特約事項
物件によって異なりますが、賃貸借契約書の条文の最後に特約事項が記載されていることが多くあります。
特約事項の箇所には、みなし賃料や退去時ハウスクリーニングの特約、短期解約による違約金などについて書かれて居ることが多いです。
書面上、目立たない箇所に記載されていますが、特約事項も重要な事が書かれている場合があります。
条文と同じくらい、特約事項に重要不可欠な事項が記載されているのでしっかり把握しましょう。
賃貸借契約書の注意点
賃貸借契約書の正しい読み方について解説しましたが、説明を受けてサインする前に必ず確認すべき注意点があります。
特に物件の使用におけるマナーや退去について細かく記載されています。
そこで次は、賃貸借契約書の注意点について解説します。
まずは、賃貸借契約書の注意点を把握するため、以下の早見表をご覧ください。
賃貸借契約書の注意点 | |
---|---|
賃料以外に支払うお金 | 敷金・礼金、共益費、保証料、更新料、駐車場代など |
解約の予告の期限 | 退去時に契約解約をオーナーに予告する期限 |
違約金の有無 | 定められた居住期間に満たない退去時の違約金の有無 |
物件での禁止事項 | ペットの飼育、迷惑行為、無断転貸など |
原状回復の負担区分 | 設備の汚損に関する責任の所在 |
では、上記の表の各記載項目について、それぞれ詳しく解説します。
賃料以外に支払うお金
賃貸物件を借りる際には、家賃以外にも共益費など毎月支払う費用があります。
賃料の項目に共益費や駐車場の代金などが記載されているので、必ず金額や支払期日と支払い方法を確かめましょう。
さらに、物件を契約するための敷金(保証金)や礼金、更新料についても記載があるので必ず確認してください。
解約の予告の期限
賃貸借契約書の条文の箇所に解約予告の期限についても記載されています。
解約の予告とは、退去する意向を貸主に伝えることで、解約予告の期限は1ヶ月〜3ヵ月前と記載されている物件が多いです。
解約予告の期限を過ぎてからの解約を行うと、退去後1ヵ月分の家賃がさらに発生してしまいます。
物件の退去をする前には、決められた期限までに解約予告を行うようにしましょう。
違約金の有無
最近の賃貸物件では、定められた居住期間に満たない退去の場合に違約金が発生する物件があります。
違約金の有無については、特約事項に記載されている場合があるので、必ず確認することが重要です。
特に、転勤など急な引っ越しを余儀なくされるときに、違約金の存在を忘れがちになるので、違約金の金額や発生事項をしっかりと把握することが重要です。
物件での禁止事項
どの賃貸物件でも居室や廊下などの共用部において使用上の禁止事項があります。
物件における禁止事項は物件によって異なりますが、強制退去や損害賠償請求される可能性もあるので、必ず確認しましょう。
具体例として、下記の内容が記載されている場合が多いです。
- 建物内での迷惑行為(騒音、振動、悪臭など)
- 居室の無断転貸
- 壁紙の穴あけ行為や汚損
- 火気の取り扱い
- ペットの飼育
- 許可のない模様替えや造作
マンションやアパートなどの集合住宅には他の入居者もいるので、相手の不快にならない振る舞いを行う必要があります。
他の入居者の迷惑にならないように、物件の禁止事項は必ず遵守しなければなりません。
原状回復の負担区分
借主は賃貸物件の退去時に原状回復の義務が課せられており、物件の設備や床材などを入居前の状態に戻さなければなりません。
特にお部屋の設備や壁紙、床材などの汚泥や破損について、責任の所在が詳しく記載されています。
退去時に、居室のエアコンのリモコンの紛失、壁紙に穴を開けた跡がある場合、原状回復することができないので、弁償する必要があります。
賃貸借契約書には、故意で行った場合の破損や予期しない事で事故が起きた際の損害賠償について記載されているのでしっかりと把握しましょう。
原状回復の責任範囲について、詳しく知りたい方は以下の記事もあわせて参考にしてください。
賃貸物件の原状回復を徹底解説!費用やトラブルを回避するポイント
賃貸借契約書に関するよくある質問
次に、一人暮らしのお部屋にまつわる賃貸借契約書に関するよくある質問について解説します。
特に、知り合いの所有しているアパートに住む方は、個人間で契約書を交わすべきなのか疑問に思うこともあります。
さらに、賃貸借契約書がない物件を借りるとどのようなことが起きるのかも取り上げるので、ぜひ参考にしてください。
Q1. 賃貸借契約書を紛失した場合はどうすればいい?
入居中に書類の整理を行った場合や契約書の提出を求められた場合に、書面の原本を紛失することがあるかもしれません。
しかし、賃貸借契約書は重要な契約書類なので、再発行を拒否する不動産会社もあります。
万が一、賃貸借契約書を紛失してしまった場合は、物件を契約した不動産会社に問い合わせて契約書のコピーをもらうことを推奨します。
不動産会社は、契約書類を5年保管する義務があるので、入居中に残っている可能性はとても高いです。
契約書類は、紛失しないように保管することが大切ですが、紛失に気づいた場合には不動産会社に相談しましょう。
Q2. 賃貸借契約書には印紙は必要?
結論から言うと、建物の賃貸借契約書に印紙は必要ありません。
ですが、自分が契約した物件とは別に土地の賃貸借契約を行った場合は印紙が必要になります。
例えば、駐車場を物件と別の場所に契約した場合には、土地の賃貸借契約書を結ぶ必要があり、駐車場に対して印紙税がかかります。
物件と同じ敷地に駐車場がある場合は、物件の施設として使用できるので、別途駐車場の契約をする必要はありません。
Q3. 18歳以上になったら賃貸借契約書を結べる?
2022年の民法改正によって、18歳以上の方でも保護者の許可なく賃貸借契約を結べるようになりました。
つまり、18歳以上は一人暮らしのお部屋を独断で契約できます。
しかし、賃貸物件を借りる際には、連帯保証人もしくは保証会社をつけることを求める貸主(大家さんや管理会社)が多いのが現状です。
現実的には、保証会社の承認が得られないケースが多いので、連帯保証人を家族にするか、家賃が払える収入がある方に限定されます。
Q4. 賃貸借契約書がないとどうなる?
賃貸借契約書がないままお部屋を借りても問題ないですが、物件に関するトラブルに巻き込まれた際に不必要な賠償責任を負う可能性があります。
賃貸借契約書の役割の一つに、損害賠償や原状回復義務の責任の所在について書かれています。
しかし、責任の所在が明確でなければ、自分が賠償する必要がない箇所も賠償をする事態になります。
自分を賠償責任から守るためにも、賃貸借契約書の作成は必須です。
個人間の契約でも賃貸借契約書は必要?
賃貸借契約の個人間契約とは、不動産会社を通さないでお部屋を貸し借りする契約ですが、この場合は賃貸借契約書を作る必要はありません。
例えば、知り合いが所有する物件を借りる場合は、不動産会社に支払うお金がないので初期費用を抑えられます。
しかし、お部屋の設備に損害を与えた場合に賃貸借契約書を交わすことでトラブルを回避できます。
親しき仲にも礼儀ありと言いますが、お互いの仲を保つためにも賃貸借契約書を交わすことをおすすめします。
まとめ
賃貸物件を初めて契約する方に向けて、賃貸借契約書の役割や正しい読み方についてご紹介しました。
物件を契約する際に、契約書に記載されている箇所や注意する項目を把握して、書面でわからない箇所があれば必ず担当者に確認しましょう。
さらに、賃貸借契約書は入居している間も処分しないで必ず保管しましょう。
そして、賃貸借契約書は物件での決まり事の他にも退去や更新に関する申し出のルールも記載されています。
書面に記載されている事は必ず遵守して、他の入居者や貸主が不快にならないように物件で過ごすことが大切です。